家庭訪問

久しぶりにある患者さんの家庭を訪問した。最初に訪問をさせていただいたのは、もう4年くらい前のことである。その時はクリニックの患者さんは彼ではなく、彼のお母さんだった。そして現在、クリニックの患者さんは彼となり、お母さんは故人となり1年以上が過ぎた。訪問のことは数週間前から話しあっていたので、彼は準備をしたのであろう。家の前には本日回収日だという新聞紙の束がいくつも出されていた。しかし決してきれいとは言えない室内の状況。束ねられていない新聞が部屋の隅にまだまだある。座れない、立っていると靴下がじんわりと冷たくなってくる。亡き母が使用していた紙オムツの残りがある。もったいなくて捨てられない、使ってくれる人がいればと彼は言う。その通りだとひとまとめにしておこうとする。下の方にあったオムツを持つと袋がぬれている。彼がそれは父親が使っていたものだと説明する。彼の父親がこの世を去ってから既に10年だと言っていたはずである。袋の汚れ具合やデザインを見て10年前のものかもしれないと思う。この部屋で一日過ごす中で彼は生活に希望を持つことができるのだろうか、一緒に訪問をしてくれた看護師さんの言葉にはっとして考え込む。私はあまりの汚さを前に何もやらない彼に怒りをとおりこして諦めの気持ちだった。反省・・・。