読書記録−その19

本日読了した本。

ハルビン回帰行

ハルビン回帰行

図書館で渡辺一枝の本だと軽い気持ちで手にして借りてきた。話は母親の死を機に著者が生まれた地であるハルピンに行く。最初は自分の生まれたところ、両親の住んでいたところを見るという旅であったが、外国人の暮らす老人ホームへ行き、そこで残留婦人をはじめ戦後中国に留まらざるをえなかった人たちと出会う。そして自分の中の翳と向かいあう旅、過去への旅がはじまる。老人ホームに暮らす人の人生を聞く。故郷をはなれて戦後を生き抜いてきた人生は、外国で年老いた人の故郷を想う気持ち、戦争がもたらしたもの、別れわかれになってしまった親や兄弟との関係など沢山のやりきれなさを感じさせる。
読みながら、戦争がもたらしたもの、残留孤児の問題はもちろん、高齢者問題、精神障がい者ハンセン氏病者の家族との関係、似たような構造をもつ社会問題を考えずにはいられなかった。頭の中にいろんなことが浮かんできてしかたがない本だった。