読書「レンゾ・ピアノ×安藤忠雄 建築家の果たす役割」

私がレンゾ・ピアノを知ったのはチューリッヒに住む友人に連れられて行ったベルンのクレー・センターである。

クレーの作品も好きになったけど、それ以上に直線がない建物に私は魅せられた。

この本はそのレンゾ・ピアノ安藤忠雄の対談である。

以前にも書いたと思うが、建築とソーシャルワークと共通する部分があると思う。

人びとの暮らしを考えるという点でそう思っていた。

けれどこの本を読んでいると、もっとたくさんの共通する部分があると感じる。

その中で一番印象に残っているのは、9.11、グラウンド・ゼロの話である。

レンゾ・ピアノと話し合ったことを安藤忠雄はこうまとめている。

「あの事件は“アメリカの経済帝国主義”対“宗教的民族主義”という文明の衝突によってもたらされた悲劇だった。
 事件の後、その悲劇の跡をどうするかという問題が人々の関心を集めた。
 私は、文明の衝突によってもたらされた“都市の空白”だからこそ、鎮魂と反省のため、それをそのままの形で記憶すべきだとかんがえた。
 そして、建物は何も建てない、ただ土を盛った墳墓のような丘を自主提案としてまとめ発表した。
 だが、失われた経済的損失の回復を第一義とする風潮に何ら働きかけることは出来ず、結局、かつてのツインタワー以上の容積を詰め込んだ建物をつくる再開発が行われることになった。」

経済効率を第一優先に世の中が動いていく。

人びとのこころはどうなってしまうのだろう。

人は強くももろくもある存在のはずだ・・・。